幼なじみが絶対に負けないラブコメ【書評】



みなさんの「幼なじみ」は、どんな幼なじみだっただろうか。

"かわいい幼なじみとの恋愛" だなんて、現実にはない!

と思いたい気持ちはわからないでもない。だが、近所でなくても「同じ小学校の〇〇ちゃんに一目惚れした」というような経験はあるのではないだろうか。



仲良く遊んだり話したりした「幼なじみ」。

しかし、そんな幼なじみがいても、高校から離れることになるケースは多い。現にわたしがそうだった。

学園ものの話で「幼なじみ」となると、幼少期からずっと主人公と一緒にいるパターンが王道だろう。そんな、"現実にはあまりないパターンの話"を、どうか物語のなかでは堪能して欲しい。

「あのころ、あの子と、あのタイミングで離れ離れにならなかったなら…」

想像でしか満たせないものもあるだろう。

これから、そんな気持ちを満足させてくれる「幼なじみ学園ラブコメ」について紹介したい。




人物紹介:

・丸末晴(まるすえはる)
幼なじみの黒羽に好かれながらも、白草に初恋し、彼氏が出来たと知り玉砕してしまう。
・志田黒羽(しだくろは)
ロリ可愛かつ面倒見の良いお姉ちゃん系。陽キャでみんなに優しいクラスの人気者。
・可知白草(かちしろくさ)
黒髪清楚系学園のアイドルで、雑誌のグラビアとかもやっちゃう現役女子高生芥見賞作家。




あらすじ:①


恋は落ちるものじゃない。身体中に回り、蝕むものだ。


主人公の丸末晴(まるすえはる)は、同じ学校に通う才女、可知白草(かちしろくさ)に恋をする。白草は高校生でありながら小説家デビューを果たし、丸はそんな彼女を、自分とは別次元の存在のように思っていた。
彼女の小説を読んだ丸は、川でひとり佇む彼女に、思い切って話しかける。小説の感想を告げた際に、嬉しそうに微笑んでくれた彼女を見て、丸は "恋の毒" に侵される。

白草は、クラスの他の男子にはそっけない。そのため、クールビューティといわれているのだが、末晴にだけは笑顔を見せる。

「自分だけにみせてくれる顔がある」。そう感じた末晴は、白草が自分に気があるという淡い期待を持っていた。きっと俺からの告白を待っているんだ!
そんな白草に、告白祭で想いを伝えてみせる!


そうして始まった末晴の初恋だが、唐突に幕を閉じる。
淡い初恋開始から間もない頃、白草が友人と話している内容が、耳に入ってしまった。
その話を聞くに、"白草が3年生の先輩に告白されて付き合い始めた" というのだ。




あらすじ:②


初恋は呪いだと誰かが言った。たぶんそれは当たっていると思う。


末晴は露骨に落ち込んでしまった。

末晴はかつて、幼なじみの志田黒羽(しだくろは)の告白を断っている。
黒羽は、白草とはまた少し違うタイプの小動物系美少女。末晴とて、幼なじみだからこそ近しい存在となれたのだが、あろうことか、この黒羽を振ってしまっているのだ。
黒羽とのやりとりから見てもふたりは相性が良いように見えるが、しかし末晴は白草のことが好きなのだ。だから黒羽の告白は受け入れられなかった。

世話焼きの黒羽は、末晴が落ち込んでいる姿を黙って見ていられなかった。末晴の話を聞き、一緒に秘めた想いを共有したところで、黒羽は言った。


「ハル、復習しようーー」





【 感想 】


序盤は少し んん? と思っていた。男嫌いの白草が、末晴とふたりきりのときには優しい笑顔を向ける。だから勘違いした。でも違った。だから復習する。

そ、そうなんですか…。と思わなくもなかったのだが、少しページをめくったら印象は変わった。

いや、待てよ、ちょっと面白いかもなコレ、と。


お互いに秘密を共有した中だから、隠すことなく話せる気安さがある。
一度告白をして、それで振ったり振られりしたら、今まで通りとはいっても、どことなく距離ができて疎遠になったりする。それを「ここからはじめる物語」としたことで、お互い良き理解者として一緒にいられるし、ストーリーも意外性が出て面白くなっているのだ。


作者もまた博識なのだろう。白草と黒羽の名前は、どちらもクローバーからつけたのだという。

クローバーの漢字表記は「白詰草」。花言葉は、「幸運」「私を想って」「約束」そして「復讐」ーー。


花言葉にも、白い面と黒い面があるように、実は、黒羽は白草のことが嫌いだった。いつも明るい黒羽からはおよそ想像もつかない意外な設定だが、フィクションだし面白いのでチャチャを入れずに読み進めていった。



白草と黒羽、なるほど、白と黒か。

確かに、白草は「白」なのだろう。
ノートをきっちりキレイに取るほど真面目で、エッチな話が嫌い。水面下で人一倍努力もできるがゆえに、芥見賞受賞につながり、作家デビューに至った。羨望の眼差しを向けられる対象と言えるだろう。しかし、中身もピュアなのか、お年頃な彼女は、阿部という一学年上の先輩と付き合ってしまう。


阿部が噂通りの人物なら申し分はないのだが、この阿部という男、なんと、末晴への当てつけのために、白草と付き合うことにしたのだという。
これには、末晴も怒り心頭。当初は、阿部と白草への復讐に、若干の良心の呵責に駆られていたことと思う。しかし、阿部の魂胆が分かると話は別で、そんな阿部の顔を屈辱で歪ませるため、末晴の復讐はこのときから始まったといえる。



まず、① 黒羽と恋人同士になったという嘘を流す
白草と負けず劣らずの美少女である彼女をゲットした末晴。それにより、白草を悔しがらせるというものだ。
そして、② 告白祭の舞台で「演技」を行う
阿部は現役の役者だが、実は末晴も元天才子役。完璧超人の阿部に勝てる見込みのある「演技」で、阿部に敗北感を味合わせる。


この2つに指針は決まった。



さっそく、黒羽が末晴と付き合っている旨をクラスで吹聴する。
もちろんクラスは騒然なのだが、なんとあの白草が動揺しているのだ。それもかなり。読んでいた本を床に落とし、なぜか末晴を睨んでいる。


ここもまた、わかりやすいポイントのひとつとなっている。



・なぜ彼女は睨んだのか。

末晴の思惑通り、悔しいと感じたから?
実は、彼女が本当に好きだったのは阿部ではなく…。
彼女は、業界関係者にも末晴のことを聞いて回っていたらしい。
とすると、やっぱり彼女は…。

など、人物の気持ちを推測しながら読みやすいため、楽しみやすい。

この作品の見どころは、このような年頃の男の葛藤、そして「女の戦い」だ。


白草がなぜ末晴を意識しているのか。その事が見えてくると、黒羽に気持ちが傾いていたであろう読者も、白草を応援したくなってくる。黒羽も黒羽で、「あそこが怪しい」「この部分は変だ」と、"末晴の協力者" というポジションを活かしながら、末晴を白草にとられまいとする。
まさに、裏表紙のイラストにあるような「末晴を巡った綱引き状態」といえる。



終盤に差しかかると、ラストの展開は、ああ、王道だね、という終わり方で幕を降ろすかに思えた。

しかし「告白祭」本番は意外な展開に!?


この "意外な展開" には、すべての読者が騙されることだろう。



最後まで、目が離せない!

食いつくように見入ってしまうこと間違いなしのこの作品。
タイトルにあるように、ラブコメ展開で進んでいく作品である。ラブコメが好きな人にはぜひ、この傑作ラノベを手に取って欲しい。強くおすすめしたい一冊だ。



Youtuberの方も紹介されています。こちらの動画も参考までにぜひ♪

(引用元:「やまさきりゅう」youtubeチャンネル 様 より )




【目次】

プロローグ

その一 フりフラれトライアングル

その二 初恋だからしょうがない

その三 宝箱と道具箱

その四 我、初恋復讐完了す

エピローグ


電撃文庫

291ページ

2019年6月8日初版発行



著者 二丸修一

岐阜市生まれ。岐阜市在住。マイペースに書き続けていつの間にかデビュー八年目。それだけ経ってようやく執筆するリズムができてきた気がするスロースターター。もっとたくさん書ければと思う今日このごろ。


イラスト しぐれうい

女子高生を描くことが好きなイラストレーター。

最近やっとぽかぽかしてきたのでおさんぽがとても楽しいです。



最後まで読んで頂きありがとうございました。当ブログの記事が、みなさまの読書のお役に立てれば幸いです。また読みに来ていただけると嬉しいです。




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