ぼくはきっとやさしい 【書評】



「男メンヘラ、果敢に生きる。恋に落ちるのは、いつも一瞬、そして全力」

(本書の帯より)


主人公は、良くも悪くも自分に正直。自分の感じた気持ちを、感じたままに相手に伝える。それを相手が受けいれてくれると思ってなのか、たまに突飛なことも言ってしまう。その結果、ふられるだけでは済まないトラブルも抱える羽目になるのであった。



作品紹介

男メンヘラ、恋路をゆく!無気力系男子・岳文が恋に落ちるのはいつも一瞬、そして全力――第160回芥川賞受賞作家がおくる、ピュアで無謀な恋愛小説!

(引用元:コミックシーモア より)





ー 感想 -


女性経験のないウブな男子大学生の、初めての恋愛と男の友情を書いた本作。
主人公 岳文の、女性に対する不慣れさ。彼女と手を繋ぐことにも緊張している姿などは、「一番最初は俺たちもそうだったよなー」と、序盤は多くの男性にも共感してもらえることだろう。


第1章は、高校から大学に進学してからの話で、いたって普通の流れだ。しかし第2章は、国内から海外へと舞台が変わった状態から始まっている。そのため、突然話が飛躍したように感じる。
このように、「なぜこうなったのだろう」ということを読者に考えさせる書き方をしており、なぜなのかはその話の後半で明らかになる。理由(原因)を後ろに持ってくることで、逆に読者を引きつけるという工夫が施されている。


この作品は、ある男子大学生の恋愛、思うようにいかない葛藤を、読者に想像させるように書き上げた恋愛小説である。

主人公は、良くも悪くも自分に正直。自分の感じた気持ちを、感じたままに相手に伝える。それを相手が受け入れてくれると思ってなのか、たまに突飛なことも言ってしまう。その結果、ふられるだけでは済まないトラブルも抱える羽目になる。


なんてことのないひょんな出会いにでも、何処か神秘性や運命性を感じてしまい、いつも唐突に好きになる。主人公は、作品のなかで全部で3回ふられることになる。どれも違う理由でダメになっている。


本書のタイトルの意味については、正直なところ、はっきりとは分からなかった。「やさしさ」が現れているとすれば、第1章(はじめから44ページまで)と、あとはラストの終わり際くらい。どこが「やさしさ」だったのか、私には判然としなかった。この作品を読んで、ぜひみなさんの感想を聞かせていただきたい。





~ 余談 ~


みなさんの思い描くはじめてのデートが、中学生時分でも高校生時分でも良いが、いづれにせよ女子のみなさん。世の男子はまず、こんなものである。女性への接し方というものが、あまりよく分からないのだ。

かわいいとかそうでないとか、好きだとかそうでないかなどは当然感じるのだが、いざ付き合ってみると、男だって緊張でうまく喋れなくなる。気の利いた言葉も言えなければ、エスコートもイマイチ。

女子たちは、「ちゃお」などの少女漫画などで、カップルのイチャつきシーンを目にしていることから、憧れの気持ちを抱いていることも少なくないだろう。


それにくらべて、男子が読む本といったら、その多くは「殴る蹴るという"正義の鉄槌"で、わるものをやっつける」という題材のものか、あとはギャグ漫画なのである。わるものをやっつける系の漫画であっても、チームで立ち向かう作品が多く、そのなかで絆、友情を深めていき、「仲間の大切さ」や「弱きを守る」ことについて伝えているのが良いところだ。


ただし、その手の漫画は女子の人気も高い。女子もまた、そういう作品が好きなのだ。男の友情に「なんかいいなあ」と思っているわけだ。


有り体に言って、仲間=友達 である。では「恋人」はどうだろう。

恋人とどう付き合っていくかの描写は、少年漫画には少ない。男子だけが置いてけぼり状態。色恋についての視点が欠落しているのだから。女子たちは小中学生の時点でませている中で、男子だけは性知識もないまま中学生に突入することも珍しくない。


そのため、いまの恋を実らせたいと考える少年たちは、きっとかげながらコッソリと、TwitterやYahoo知恵袋で、彼女と手を繋ぐタイミングについて~とか、キスのタイミングについて~という質問を繰り返すという、健気な努力をして知識を得るのだろう。


この小説を読んで、わたしはふと「いちご100%」が懐かしくなった。


15年ほど前にわたしの周りで流行っていた少年漫画なのだが、これは成人コミック以外では、当時のわれわれ男子にとってバイブルのひとつであった。今の中高生にもぜひおすすめしたい。




小説の話に戻るが、作中の主人公 岳史 は、そういった下調べをしていない。


なんでも気軽に調べられる時代なのに調べない。なるほど、無気力系男子。確かにそうかもしれないなと思った。

ただ本能のままに行動し、緊張し、あと一歩踏み切れない自分に涙する。でもだからこそ、ありのままに描かれているのだろうと感じた。

いまどきの中高生に響くかはわからないが、いまの大人世代はこの主人公のように学んでいったのだ。(涙までするかは人それぞれだが)





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河出書房新社

148ページ

2019年2月18日初版印刷


著者 町屋 良平 (マチヤ リョウヘイ) 

1983年、東京都生まれ。2016年、「青が破れる」で第53回文藝受賞を受賞しデビュー。著書に『しき』、『1R1分54秒』がある。




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