薬剤師の本音 【書評】



我々は、わかった気になっている。大丈夫だと過信している。

そのような事柄がかなり多いように感じる。


本書のあとがきにもあるが「自分が薬を飲むのは何のためなのか、薬を飲んだらどうなるのか、そしてどういうリスクがあるのか」を理解し、薬に頼らず自衛出来るところは自衛する。そういう意識が我々には必要なのではないだろうか。




薬で病気が治るはずなら、あなたの飲む薬の量が減らないのはおかしくありませんか?


本著のカバーに書いてあるこのメッセージは、実にごもっともな意見である。
ただでさえ、日本は超高齢社会にとうに突入している。必然的に、患者も高齢者の方が多くなるが、加齢による体調の変化があるなかで、多くの高齢者が薬を服用している。


筆者は本の冒頭で、ふらつきや記憶障害、せん妄や尿失禁などについて、薬が原因になっていることも考えられると述べている。少しでもそのように考えてみたことのある方は、薬の服用者全体の、何割いるだろうか。


たとえば、「薬が効く」とはどういう状態なのか。


詳細は本書のp.28-p.29にあるが、これは薬の成分が全身に行き渡っている状態を指すものである。問題なさそうに聞こえるが「なにも悪くない部分にも薬の成分が行き渡っている」ということでもあるのだ。


これを聞くと、ドラッグストアなどで売られている市販薬の、パッケージに書かれた謳い文句には、嘘にならない程度のグレーな表記も混ざっていることがうかがえる。結局のところ、悪いところにだけピンポイントに効くという都合の良い話はないということなのである。


また、薬を4錠以上服用している場合は注意してほしいと筆者は警鐘を鳴らしている。
同様の内容は、たとえば 近藤誠 著 『クスリに殺されない47の心得』 ㈱アスコム出版 にも書かれている。今から4年以上前に出版された本だが、その時点でもうとっくに明らかになっていた薬のデメリットが、今もなお知られていないのが現状なのである。


人々は、薬を飲めば病気が治ると信じて、風邪をひいただけで病院に駆け込む。登録販売者がいるから安心だと思って、広告掲載日やポイント○倍デーになったら、ドラッグストアで置き薬を買う。(あくまで一例)


敢えて述べておきたい。病院もドラッグストアも、どちらもビジネスなのである。みんながみんな、本当のことを言っていては、薬が売れなくなり、その産業は成り立たないのである。


「病院に行くな」と言うわけではない。先天的な病気、あるいは生活に支障が出るほどの急性な症状など、本当に薬が必要なケースもあるだろう。気軽に相談ができるかかりつけの病院や薬局を得ておくことは、多剤服用を防ぐうえでも必要なことでもある。ネットで拾った知識を信じてしまうのも怪しいため、信頼できる人に相談してもらった方がよいだろう。


薬の量を減らすにしても、いきなりいま服用しているものをぱったり止めてしまうのは、その方がリスクになるというのもある。しかし、基本的には自然治癒で治すものなのである。治らないからと別の薬に変えればいいというものでもない。ましてや量を増やせばいいわけでもない。


筆者は、薬の影響を受ける可能性がもっとも高い高齢者が、どの世代より薬に無頓着であると感じていた。そのことから、薬を飲むことのリスクと薬の本当の役割を、高齢の方々に向けて本音で訴えてみようと思い立ち、この本を執筆したのだという。



我々は、わかった気になっている。大丈夫だと過信している。そのような事柄がかなり多いように感じる。
私がここに書いた内容だけをとっても、それを理解していた方はこの記事を読む方のなかに、果たして何名いただろう。


本書のあとがきにもあるが「自分が薬を飲むのは何のためなのか、薬を飲んだらどうなるのか、そしてどういうリスクがあるのか」を理解し、薬に頼らず自衛出来るところは自衛する。そういう意識が我々には必要なのではないだろうか。

コンビニよりも薬局の方が多い日本。次々とドラックストアの出店が加速している日本。そんな「薬大国」に我々は暮らしているのだから。




【目次】

はじめに

第一章 薬剤師だけが知っている薬の正体

第二章 高齢者が知らない ”薬漬け” のリスク

第三章 65歳を過ぎたら飲んではいけない薬

第四章 薬に頼らない生活

おわりに


宝島社

188ページ

2019年3月13日第1刷発行


著者 宇多川久美子

1959年、千葉県生まれ。薬剤師・栄養学博士。明治薬科大学卒業後、薬剤師として総合病院に勤務。患者に投薬を続けるなかで「薬で病気は治らない」現実に目覚め、病院を退職。自らも薬をやめ、不調だった身体が健康になる。一般社団法人国際感色協会理事長、ハッピーウォーク主宰。著書に『それでも薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『その「1錠」が脳をダメにする』(SBクリエイティブ)ほか多数。



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